「はぁ……は、あ、いや、やめ……っ、」
 剥かれた肌の上をぬめぬめと這い回る触手の感触に耐えかねて、必死にその一本を掴み取る。そのまま力を込めて引き剥がそうとするが、得体の知れぬ粘液に覆われたその表面は、ただ少女の指先を空しく滑らせるだけだ。
 意味を成さぬ抗いを気にも留めず、幼い乳房の先端に取り付いた吸い口が、固く尖ったつぼみをじゅるりと音を立てて搾り取る。
「ひゃうぅ……っ!」
 吸い口の内側には細かな繊毛がびっしりと生えていて、それが四方八方から乳首を包み込むように逆撫でし、むず痒い刺激を与えてくる。
 繊毛に撫でられながら、何度も繰り返し乳首を吸われて、全身の力が抜けていくようだった。千鶴の抵抗が弱まったのを見て取ると、触手はぐったりとした彼女の体を持ち上げ、ほっそりした太股に巻きついた幾本かの肉蔓が、ゆっくりと、しかし容赦なくその両足を開かせていく。
 大きく広げられた股座に、新たな触手がぬるりと滑り込んだ。それはあたかも人の指先のように器用な動きで、秘められた浅い肉溝の両端に添えられる。
 ──そうして。
 ゆるゆると、無残にも割り裂かれていく可憐な花びら。
 くぷり、という水音と共に、中に湛えられていた淫水が堰を切って溢れ出し、尻たぶの方まで伝い流れていく。膣口から菊座まで糸を引く女の滴りを、枝分かれした何本もの舌先が、我先にと争って舐め回す。
 ぴんと立った淫核は、まだ其処には触れられていないにも関わらず、包皮から顔を覗かせて健気に震えていた。
 それらの淫らな光景は、この地獄のような初夜の床に招かれながら、決して花嫁には触れることの叶わぬ、ただ一人の客人(まれびと)に見せ付けられるかのように────
「あ、いや、あ、ああ……やめてぇえええっ!!」
「くそ……っ、止めろ、これ以上そいつに手を出すな……っ!」
 涙で滲んだ視界に、見慣れた男の顔が映った。誰よりも矜持高く、いつも凛と背筋を伸ばして、乱れたところなどひとつも見せないようなその人は、今は惨めに床に這いつくばり、苦悶の表情を浮かべながら、血を吐くような声で叫び続けている。
「やめ、お願い……土方、さん……逃げて、……下さい、」
 ──もう千鶴にも分かっている。土方は、己の身ひとつならば、どんな手を使ってでもこの牢獄から逃げられる。このおぞましい生き物は、最低限の思考能力こそあるようだが、所詮は本能と欲に突き動かされる鈍重な肉のカタマリでしかない。羅刹の力を持つ彼なら、触手を力ずくで引きちぎり、肉の壁をこじ開けて脱出する事は、決して不可能ではないだろう。
 彼がそうしないのは、ひとえに千鶴の存在があるからだ。
 土方が千鶴に手を伸ばそうとすれば、彼女の四肢に巻きついた触手に、ぎしぎしと骨が軋むほどの力が込められる。すぐに治癒するとは言え、そのたびに皮膚は裂け、千鶴の真っ白な肌には鮮血が滲む。
 やっと手に入れた、己が欲望を満たしてくれるこの「獲物」を、自分以外の牡に奪い取られるくらいならば──いっそその手足を引き千切り、首を捻じ切って、二度と他の男を受け入れられないように殺してやる──
 その獣じみた妄執と殺意が、土方の動きを縫い止める。土方が千鶴を助けようとして動けば、その瞬間に触手は千鶴を絞め殺し、引き裂かれた残骸を、彼の前に塵のように放り出すだろう。
「千鶴……くそ……っ、千鶴……っ!!」
 土方の絶叫を聞きながら、彼女はいっそそうなってくれればいいのに、と願った。
 これ以上彼の前で辱めを受け、その志を穢すくらいなら──足手纏いになるよりも、一思いに死んでしまいたい。だが、口に押し入れられたひときわ太い肉棒が邪魔で、舌を噛み切る事も出来ぬ。否、例えそう出来たところで、鬼の体質を持つこの体は、もつれた舌が喉に詰まって窒息する前に、その傷を癒してしまうだろう。
 鬼であるがゆえに、化外の陵辱に狂い死ぬことも出来ぬ。自害する事すらも許されぬ。
 なんと業深きはこの身に流れる血の性(さが)か。ただの人の女であれば、慕情を抱く男にこれほどの屈辱を与える前に、命果てることも出来ただろうに。鬼の躯は尚も浅ましく、裂かれる端から傷を癒し、抉られる痛みをも塗り潰して、千鶴の意志とは無関係に生きつなぐことを望むのだ。
「ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさい……」
 触手に全身を絡め取られ、肉の牢獄に囚われながら、少女はただ魘されるように詫び続ける。
 

 ──こんな厭わしい姿をあなたに見られるくらいなら、いっそ物言わぬ骸になってから、あなたの元に帰りたかった。